酒房 ひで 日本酒コラム・エッセイ

 

村おこしと純米酒

 

 コシヒカリ、ひとめぼれ、あきたこまちは、ご存知「うるち米」。ヒヨクモチ、ヒメノモチ、はくちょうもちは、「もち」が付くので「もち米」とお判かりでしょう。山田錦、五百万石、美山錦と漢字名が統きますが、これらは「酒米(酒造好適米)」と呼ばれています。酒米は、うるち米に属しますが、食べても余り美味しくありません。そのかわり日本酒づくりには、素晴らしいカを発揮します。

 「日本酒?ダメダメ,悪酔いするから。冷や酒?もっとダメ!後で効く。」とよく聞きます。かつて小生もそうでした。しかし、以前の勤務地、仙台の地酒飲み屋さんで飲んだ酒が、認識を変えました。

 「世の中にこんな旨い酒があるとは!しかも二日酔いしないじゃないか!」と。 目本酒には様々な種類があります。小生なりに大きく分けると、原料の違いによって、米にアルコールと水あめ(!)などを加えた「一般酒(普通酒ともいいます)」、米にアルコールだけを加えた「アル添洒」、米だけで造る「純米酒」があります。また精米歩合によって、「普通酒」、「本醸造酒」、「吟醸酒」、「大吟醸酒」に分けられます(原酒や生酒等は、また別の分類になります)。

 米1俵で造れる量は、純米酒で1升瓶60本といわれますが、一般酒の中にはいろいろ混ぜて180本にも増やしているものもあります。味は各人の好みですがら一般酒だから駄目とは言えませんし、純米酒だから美味しいとも限りません。それでも日本酒は、米だけで造るべきだ、ドン!(興奮して机を叩いた)と思うのです。

 ところが日本酒全体に占める、純米酒(純米吟醜、純米大吟醸を合む)の割合は、僅か5%に過ぎません。ちなみに酒米作付面積は、平成5年で19,175haと、うるち米全体のl%です。

 さて、輸人自由化による外米シェアの拡大や耕作放棄地の増大など、水田農業は非常に厳しい状況です。そこで酒米を活用出来ないでしょうか。

 酒米は手間がかかり大規模経営に向きません。昼夜の寒暖差の大きな中山間地でよく育ちます。飯米に比べ高く売れます(平成4年度の酒米価格は、平均で19,458円/60kg、中には3万円を超えるものもあります)。外米に押された分を捕うため、さらには中山間地域の活性化のため、平場の小規模農家の経営維持のため、酒米の作付を増やすことが出来ないでしょうか。そのためには日本酒の純米酒比率を上げなけれはなりません。

 実は日本酒も輸人する時代になってしまいました。平成7年上半期の輸人量が1.086KL。年間量を成人1人当たりで割れば、ぐい呑み1杯分に過ぎない、とはいえ、前年に比べ3倍の伸びを示していることは、由々しき事態です。稲作が日本の文化であるならば、その文化の一つとして日本酒も守りたい。外国産の酒米で造った外国製の純米酒なぞ(例え安くて旨くても)飲みたくないですね。
 「酒づくりは米づくり、米作りは土づくり、土づくりは人づくり」という言葉があります。我々農業・農村に関わる技術者は、酒を飲むだけではなく、酒を造る酒米のための基礎づくりもしているのです。

 ということで農業・農村の維持発展に寄与するためにも、国産の酒米で醸した純米酒を大いに飲みませんか!(「飲んべぇの言い訳にすきない」と言われそうですが……)。

所属団体の会報用の原稿

1996年3月記

 

逃げろ