酒房 ひで 日本酒コラム・エッセイ |
ごほうびは日本酒で!(第3話)
〔 珍味編 〕 |
東北の三陸名産 といえば牡蠣(カキ)、そして・・・海蛸(ホヤ)である! そう「ホヤ」!もうこの文字を見ただけで、ダメな人は全くもって「ダメ」な食材のひとつなのであろう。苦手な方々はそもそも「初体験」で、あまり鮮度のよろしくないものを召し上がったに違いない。そう、このホヤなるもの、「鮮度が命」の食材である!とはいえ、なかなか「新鮮」なものに「ありつける」ことは難しい食材でもあるわけで、そしてそれ以上にあの姿形は、「食わず嫌い促進要素」でもあるのかもしれない。 僕はかつて杜の都−仙台に住んでいたことがある。ちなみにこの街は僕に日本酒の美味しさを教えてくれハマリ込むきっかけとなった有り難い街でもある。 話は変わるが、日本の山が荒れている。 戦後植林されたスギやヒノキが外国産木材の輸入による価格低迷で管理もされず、細長いヒョロヒョロの森になっている、いわゆるモヤシ林とか線香林といわれている状況だ。このままではバタバタと風や雪で倒れていき、禿山になってしまう。必然的に水が貯えられなくなり、美味い地下水も少なくなるのだ。 そしてもうひとつ、地下の水は様々なミネラルとともに海に流れ、海に活力をあたえる重要な役割をも担っている。何より山を山として守ることが美味い酒造りにもつながり、美味しい天然ホヤなどの様々な海産物が、健康な山を抜きにしては生まれないことに思いを寄せなくてはならないと思う。 僕も森の間伐作業のボランティアをしたことがあるが、重い丸太を抱え斜面を昇り降りする重労働の後のビールは格別だった。しかも3杯目からは、山の幸を肴に日本酒でごほうび、自然の恵みに乾杯。最高である。 −ひ で−
|
|
今宵の隠れ家
与太呂(よたろ) |
粋な街、四谷荒木町の小路にひっそりと構える隠れ家的な店。
店主と奥様そして、名テイスターの美娘さんが、こだわりにこだわった旨酒と、新たに発掘したお薦めの酒が味わえる。客が注文した酒に、美娘さんが歯に衣着せない厳しい表現をするたびに、側にいる店主夫妻はいつもハラハラ。でも、呑んでみれば必ず納得!天使の舌を持つ奇跡の美娘だった。 特筆すべきは、日本酒との相性にだけこだわった肴。春は究極の山菜「ミズ」、初夏は茗荷の握り鮨、夏は山形の岩牡蠣・青森のフジツボ・肉厚の天然ホヤ、秋は幻のミズの実などの極めて「旬」な一瞬の食材を「酒」との相性を考え提供してくれる。 なかでも淡い味付けの「おから」は、端麗な酒にこの上もなく合う一品である。 店主の蕎麦好きが高じて「与太呂庵」を群馬県猿ヶ京に設け、蕎麦の栽培と蕎麦打ち教室を開いている。 |
今宵の旨酒
日高見(ひたかみ) |
東北を縦断する北上川が太平洋に流れ込む、宮城県石巻市。世界三大漁場のひとつといわれる三陸金華山沖を抱え、年間を通して海の幸に溢れている港町にある、文久元年(1861)創業の造り酒屋。
その北上川流域には、伝説に残る「日高見国」があったという。この北上の古名である「日高見」を銘柄としている。 口当たりが優しく、米の旨味が伝わりながら喉越しもさわらずに流れていく、飲み飽きしない酒である。 若き現社長が跡を継ぎ、苦労しながら更なる酒質向上を目指したことで、従来の旨味と喉越しを残しながら、より洗練された味になったのは見事である。昔の造り方に拘った「天竺シリーズ」も是非!
宮城県石巻市清水町1丁目5−3 |
2007年10月記 |