オ ト ー リ
憲 章
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我々の先人は、決して豊かな土地柄ではなく、頻繁に台風干ばつなどの災害を受ける厳しい自然環境にありながら、共に助け合い、励まし合うことによって、この島での営みを続けてきた。 その貧しい生活の中で、同じ場に集う者どうしが、家族の幸せ健康や繁栄、豊作や大漁などを祈念し、その願いが通り叶うようにとオトーりを回し、乏しい酒を分かち合った。 この精神こそが小さな孤島に住む人々の知恵であり、当然の帰結であったはずである。この島に生きる者として隣人と助け合い、励まし合うことは、なんら特別なことではなく、ましてや島民の美徳と賞賛されような類のものではなかったはずである。 しかるに近年の我々は、先人が営々と築き上げた物質的豊かさは享受しながらも、同時に受け継ぐべきであった精神を置き忘れてはこなかったか。子孫である我々は頼れる隣人になりえているであろうか。 オトーリが、その用い方によっては、青少年の非行、家庭の崩壊、健康害などのもととなることは自明である。オトーリがそのような負の遺産とならぬようにと自戒しつつ、我々はここに、その正しく美しい精神、理念を継承し、新たなるユイマールの精神を構築することに努力する。 日本が小さな島国であり、地球が宇宙に浮かぶ小さな星であることからすれば、我々の希求するものが全ての人類に共有できるものであることを信ずる。 経済力や武力で自らの優位さを示すのではなく、握った拳を握手に、手にする武器を杯にできるよう、この宮古島からオトーリの精髄を発信し、世界平和の礎とならんことを願う。 |